寒夜幻想

早めに家に帰る。
奥さんと、子供が迎えてくれる。
暖かい家の中で、一緒にごはんを食べる。
子供がぐずるので、奥さんとかわりばんこのごはん。




小学校の頃の僕の夢は、「小説家」。
何度か書いてみたけれど、素敵な話を思いつくには多くの経験か、多くの洞察が必要だった。
自意識過剰なインドア派の子供にそんな能力はなく。
また、能力を身につけるのに努力をする気にもなれず。
いつのまにか、そんな夢はみなくなった。


中学生の頃の僕の夢は「30歳で暗殺されること」。
生意気なガキだ。
たくさん本を読んで、世の中を知った気になっていた。
頭の中にある世界でどんなにいろんな事ができようと、目の前にある世界ではやっぱり自意識過剰なインドア派の子供で。
いつのまにか、そんな夢はみなくなった。


高校と大学の頃は、夢なんて見ているヒマがなかった。
高校では、好きな本を読んで、好きなゲームをして、好きな事をした。
大学では、アルバイト。自力で金を稼ぐことの開放感にはまって、卒業が1年遅れた。
その勢いのまま、就職。
会社に入っていきなりの常駐先で、いろんな事を教えてもらった。
仕事のこと。技術のこと。世の中のこと。人間のこと。
頭でっかちな僕が、初めて身体で何かを覚えた時期だった。


頭と身体のバランスが、多少なりにも整ってくると、足りないものが見えてくる。
社会人3年目は、技術に、知識に、とにかく餓えてた。
居心地はすごくよくて、仕事は楽しくて、でもあまり開発には参加していなくて、やってる仕事は客観的に見て派遣社員で・・・。
「派遣契約が終わったら、他の仕事ができるだろうか。このままここにいたら、腕が鈍るかも・・・。」
それで転職。
ひとつの仕事の始まりから終わりまで、全部見えるくらい、小さな会社に。
がつがつと仕事して、それなりに充実。




気が付けば、子供を抱いて、奥さんと囲む食卓に幸せを感じたりして。




ブログの更新も滞りがちな僕は、小説家にはなれなかった。
ちっぽけなサラリーマンの僕は、たぶん暗殺なんてされない。
夢みるヒマもなく楽しめるほどの時間は、もうない。
圧倒的な飢餓感が少しずつ日々の幸福に変わっていき、成長の速度は鈍った。


僕の人生は、あと何年続くのか。
どこから来て、どこへ行くのか。


20代最後の一年を迎えるにあたって、つらつらと考えた。